げんこつやまのこどもたち
2015年11月14日 ラクガキ
娘が閉めたドアに息子の指が挟まったらしく、息子が半泣きのままグーで娘の頭を3回叩いた。息子のグーパンチを見たのはそれが初めてで、拳骨を作って落としたい程指は痛かったんだろうな。そうだとしても、俺は無性に腹立たしくて目を凝らした。娘は泣かなかった。悲しい顔もしなかった。ただじっとお兄ちゃんを見つめてた。俺はその横顔を見てた。そのあとすぐ、また同じようなことが起きて、今度は体にパンチ2発。3発目に手が顔の辺りに当たった時、俺はたまらず息子を怒鳴った。不思議だったのは、娘が泣きもしないし怒りもしない。それどころか、声ひとつ出さなかったこと。避けようとも逃げようともしなかった。ビックリして目を丸くしてる訳でも、怖くて動けない様子でもないのに、少しだけ顔を歪める程度で、見てる分には平然としてた。娘は大きな声で泣き叫ぶことができる子供だし、何よりお兄ちゃんが怖い訳じゃない。多分大好きで、ちょっかいを出すのはむしろ娘の方。俺は顔を寄せて言った。「嫌だったらやめてって言うんだよ?」「や・め・て。」「やめてって言えたら、カッコいいよ。」ばつが悪そうな息子をよそに、娘は小さく笑った。俺はそのあとしばらく胸がざわついて、息子と娘の顔を思い出してた。その内、何となく理由が分かった気がした。
もう長いこと、あんなケンカやイジメみたいなことしてないなと。忘れちゃったことも、忘れられないこともあるけど、高校生くらいまでは、いっぱい色んなケンカをしたな。今俺があんなふうに叩かれたりしたら、きっと驚いて、そのあとは多分、睨みつけて恨み続けるか、殺すぞくらいの勢いで詰め寄るか、すみませんなんて言って謝るか、鼻で笑って見下してるていでかっこつけるか。いずれにしろ極端で過剰で後味の悪いことをしそうな気がする。でも本当はそうじゃなくて、いてーなコノヤローってやり返して、そのあと一緒にメシでも行っときゃいいのかもしれないのに。あんなことされたからとか、大事にしてくれなかったとか、そういう思い込みや勘違いから生まれた過剰で後味の悪い憎しみなんか、時間をかけてちょっとずつ許してくのもいいけど、本当は全部をギュッとしちゃえば、ただのダイヤモンドなんじゃないかな。泥や砂の中に隠れてるダイヤモンドを、がむしゃらに探すみたいなことをしてた気もするけど、怖くて醜くて邪魔だと思ってたそのこと自体が勘違いだとしたら、それは世界を一瞬で変えることになるかもしれないじゃない。息子や娘の目に映る世界で俺がもし、そんなことはないだろうけど、よく納豆を食べる人としてだけ存在してたとしたら、たまには拳をギュッと握って、ガッツポーズを決めてるところでも見せてあげようと思った。
もう長いこと、あんなケンカやイジメみたいなことしてないなと。忘れちゃったことも、忘れられないこともあるけど、高校生くらいまでは、いっぱい色んなケンカをしたな。今俺があんなふうに叩かれたりしたら、きっと驚いて、そのあとは多分、睨みつけて恨み続けるか、殺すぞくらいの勢いで詰め寄るか、すみませんなんて言って謝るか、鼻で笑って見下してるていでかっこつけるか。いずれにしろ極端で過剰で後味の悪いことをしそうな気がする。でも本当はそうじゃなくて、いてーなコノヤローってやり返して、そのあと一緒にメシでも行っときゃいいのかもしれないのに。あんなことされたからとか、大事にしてくれなかったとか、そういう思い込みや勘違いから生まれた過剰で後味の悪い憎しみなんか、時間をかけてちょっとずつ許してくのもいいけど、本当は全部をギュッとしちゃえば、ただのダイヤモンドなんじゃないかな。泥や砂の中に隠れてるダイヤモンドを、がむしゃらに探すみたいなことをしてた気もするけど、怖くて醜くて邪魔だと思ってたそのこと自体が勘違いだとしたら、それは世界を一瞬で変えることになるかもしれないじゃない。息子や娘の目に映る世界で俺がもし、そんなことはないだろうけど、よく納豆を食べる人としてだけ存在してたとしたら、たまには拳をギュッと握って、ガッツポーズを決めてるところでも見せてあげようと思った。
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