マコちゃん⑤
先に私とノリが到着し、あとのふたりを待っているところに、女の子が恐る恐る声を掛けてきた。嫌な予感がした。

「ノリさんたちですよね?初めまして。」

「そうだけど、あんただあれ?」

「サキです。今日はオフ会に誘って頂きましてありがとうございます。」

「わお。わお。わお。わお。」

ちょっとノリ、これどういうこと?

驚いた。ノリがオフ会と言って騙していたことも。グラップラーサキが高校生だったことも。ノリによれば、年齢は48。アンダーグラウンドな大会で優勝したこともある実力者。友人とその恋人を助けるために、ある教団に闘いを挑むから力になって欲しい。そう説明したところ分かってくれた。私はそう聞いてた。困惑する私たちにサキが言った。

「アイさん。ノリさん。これだけは言っておきますね。サキはまだ高校生かもしれないけど、格闘家なのは本当です。オフ会と言ったのは、サキにとっては殴り込みもオフ会の内だからです。」

「あ〜、そういうことねえ。」

ノリは黙ってて。

「セイ。」

悪いことは言わない。帰りなさい。帰って全部忘れなさい。

「年齢を偽っていたことは謝ります。だけど、今さら帰るなんてできません。ふたりはサキを必要としてくれたじゃないですか。サキにはそれがすごく嬉しかった・・・嬉しかったんです・・・。」

私とノリは互いを探るように目を見合わせ、深く息を吐き、背中を丸めてしゃがみ込むサキに目を落とした。そしたらもう、あとは笑うくらいしかやることが見つからなかった。

よく聞いて。グラップラーサキ!今夜私たちがやろうとしてることはね、遊びでもなければオフ会でもない。戦争と同じ。戦争っていうのはね、余りにも未来がないことをする時に使う言葉よね。それでもついて来たいって言うんなら、1つだけ条件がある。

「何ですか?」

他人のふりをして。偶然同じタイミングで入店した客として振る舞うこと。わかった?

「・・・わかりました。他人のふりします。」

こうして女子高生グラップラーサキが仲間に加わり、当初の計画通りとは行かなくなったものの、それでも4人で乗り込むことに変わりはなかった。日の沈みかけたスーパーの駐車場で、私たちは最後の1人を待った。

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