マコちゃん⑥
マコちゃんママを待つ間、ふたりのこんな会話を耳にした。物怖じしないふたりに感心してた私だったけど、これには感心を通り越して宇宙だった。

「ノリさんってモデルなんですよねー。スゴいなー。」

「モデルって言っても色々あるからねー。私の場合はパーツモデル。パーモよパーモ。」

「パーツモデルって、手とか足とかのアップの写真撮ったりする時のあれですか?」

「そう。そう。そう。そう。私はそのお尻専門。シリモとかケツモとか、聞いたことない?」

「初めて聞きました。」

ノリのお尻は確かに綺麗だけど、今の私はそんなことどうでもよかった。しばらくして、真っ赤な車が1台、駐車場に入って来るのが見えた。運転してるのは金髪にサングラスの日本人女性。助手席には大きなゴリラのぬいぐるみ。間違えようがない。マコちゃんママのお出ましだ。

「ごめんなさいねえ。アイちゃん。遅くなっちゃたあ。」

3年程前になる。急な発熱と嘔吐で倒れたマコちゃんママは、その日から数えて108日間入院した。その時顔中にできた原因不明の斑点が、化粧の下から浮かび上がって見える程、3年経った今もなお、女の顔を邪魔してた。

「おばさん、久しぶり。」
「サキです。よろしくお願いします。」

「マコトの母です。よろしく。」
「はいこれ。さっき買ってきたの。味噌まんじゅう。」

この天然には、さすがの私もどうすることもできなかった。

「和菓子とファンタ意外と合いますよ?」

事もなげに頬張ったあと、持ってたファンタを口にしながら、サキが言った。ほのぼのとしたムードのまま、気付けば空はすっかり暗く、そーみー亭はとっくに営業中。そろそろ行きましょうか。私が言った。普段であれば何でもないその一言に、緊張が走る。

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